都市部の外構色彩の現状 -⑦アンケート調査-

武蔵小杉

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 調査の目的

これまでの調査より、壁面や床材の色彩の使われ方によって様々な印象を与えることができること派手な色彩の使用は場合によっては景観的に問題があることが分かりました。

このアンケート調査では、「都市部の建築物の壁面および床材の外構色彩」についての客観的なイメージを調査することで研究結果に信憑性を見出すことを目的とします。

調査方法

紙面によるアンケート調査を行います。165名に外構色彩に関するアンケート用紙を配布し、回答してもらいました。

調査結果

丸の内仲通り

丸の内仲通りで最も調和すると考えるものはどれか

 

Bを選ぶ場合が最も選ばれました。理由としては、無難な色合いであること、「周囲の建物と色合いがあっている」ことなどが挙げられます。A、Cが比較的選ばれなかった理由としては、「明るすぎて眩しいという意見や、「暗すぎて怖い」という意見がありました。

上の表は、参考比較です。

東日本と西日本の比較では、東日本はAが全体の31%で、明るい色の床材を選ぶ結果となりました。西日本はCが全体の32%で、落ち着いた色の床材に偏る結果となりました。しかし、西日本の集計が19人のため、信ぴょう性は高くありません。

KOREDO室町

KOREDO室町で最も調和すると考えるものはどれか

 

Aが全体の40%と最も多く、Bが36%、Cが24%と比較的分かれました。Aでは「商業施設の賑わいにあっている」といった意見がありました。Bでは「明るい印象で商業施設に向いている」「壁面が暗いので床は明るいほうが良い」などの意見がありました。Cでは「高級な雰囲気にあっている」「建物と床材の色があっていて良い」などの意見がありました。

上の表は、参考比較です。

男女の比較では、女性はAが全体の51%で最も多く選ばれました。男性はBが全体の42%で最も多い結果となりました。 東日本と西日本の比較では、東日本はAが全体の41%と西日本と比較し多い結果となった。逆に西日本はCが全体の37%と東日本と比べ多い結果となりました。しかし、西日本の集計が19人のため、信ぴょう性は高くありません。 建築関係とそれ他の比較では、Aを選んだ人が建築関係が全体の33%、その他が71%と、極端に差が開きました。

虎ノ門ヒルズ

虎ノ門ヒルズで最も調和すると考えるものはどれか

 

Bが全体の48%で最も多く、ついでAが43%という結果になりました。Aでは、「ガラスカーテンウォールとあっている」といった意見がみられました。Bでは「無難な色」「虎ノ門ヒルズの雰囲気とあっている」といった意見がみられました。

男女の比較では、男性はAが48%で女性と比べて比較的多い結果となりました。女性はBが全体の57%で最も多く、男性と比較しても多い結果となりました。東日本と西日本の比較では、Aをみると西日本の選択者が58%で東日本と比べると比較的多い結果となりました。しかし、西日本の集計が19人のため、信ぴょう性は高くありません。建築関係とその他の比較では、Aをみると建築関係の選択者が46%でその他の選択者と比較して多い結果となりました。

武蔵小杉

武蔵小杉で最も調和すると考えるものはどれか

 

Cが57%で最も多い結果となり、次いでBの32%でした。Cでは「周辺の建物と同じ色合いだから」「住宅街なので明るいほうが良い」といった意見が見られました。Bでは「周りのマンションと調和している」などの意見がありました。

上の表は、さ参考比較です。

男女の比較では、Bは女性が37%と男性と比較して多く、Cは男性が61%と女性と比較して多い結果となりました。

光が丘

光が丘で最も調和すると考えるものはどれか

 

Bが43%で最も多い結果となりました。Bでは「マンションの明るい色味を抑えている」などの意見がみられました。Aでは「建物とのメリハリ」「道と建物の境がみやすい」といった意見がみられました。Cでは「マンションの色とあっている」「温かみが増している」といった意見がありました。

上の表は、参考比較です。

男女の比較、東日本と西日本の比較では、大きな違いは見られませんでした。建築関係とその他の比較では、その他の53%がCを選択し建築関係と比べると2倍以上の差がみられました。

なぎさニュータウン

なぎさニュータウンで最も調和すると考えるものはどれか

Aが70%で過半数が選択する結果となりました。Aでは、「一番暖かみを感じる」「暗すぎると不安になるから」といった意見が見られました。Bでは「静かな雰囲気で落ち着きがある」「住宅街なので」といった意見が見られました。

上の表は、参考比較です。

東日本と西日本での比較では、西日本をみてみると、Cの選択者が16%で東日本と比較して多い結果となりました。

考察

全体の傾向

全体的に見て、暗い床材が使われるものは選ばれにくい傾向にありました。暗い床材を使った(1)丸の内仲通り、(2)KOREDO室町、(3)虎ノ門ヒルズ、(6)なぎさニュータウンの4項目中、(2)KOREDO室町以外の3項目が10%未満の選択率となる結果となりました。これは、安全面での考慮や圧迫感などの色彩心理的な効果が生まれたためと考えます。また、その場所の建物の立地条件から明るい床材を選択するケースも考えられます。

しかしながら(3)KOREDO室町をみると、24%が暗い床材を選択されていました。この理由としては、建物のイメージにあっていること、建物の壁面とあった色彩であることなどが考えられます。

YR系を使用した床材に関しても選ばれる傾向にありました。YR系を用いた(2)KOREDO室町、(4)武蔵小杉、(5)光が丘の3項目で28%以上が選択する結果となりました。この理由として、(2)KOREDO室町では、商業施設にあった色合いであること、(4)武蔵小杉では、周辺の建物と色合いがっていること、単純に暖かみを感じられることなどが考えられます。

色彩選びに影響を与える8つの要素

調和している景観を選ぶ要素として色の組み合わせ以外にも様々な要素があるとわかりました。そこで、アンケートにて書かれた理由の計742件を下記の8つの要素に分類しました。

  1. 色や外壁との組み合わせ
  2. 街のイメージ
  3. 建物の用途
  4. 立地条件
  5. 景観の主役
  6. 暖かみ
  7. 明るさ
  8. その他

上の表は、景観を選ぶためと考えられる要素を分類分けしたものです。「色や外壁との組み合わせ」を選ぶ要素とした人は306件で最も多い結果となりました。それ以外にも「明るさ」「建物の用途」「街のイメージ」「立地条件」が50件以上という結果となりました。

「色や外壁との組み合わせ」を選ぶ要素とした人は306件で最も多い結果となりました。それ以外にも「明るさ」「建物の用途」「街のイメージ」「立地条件」が50件を超える結果となりました。

「色や外壁との組み合わせ」以外にも色彩を選ぶ要素として様々な理由があげられました。特に50件以上となった5つの要素は、街や建物の色彩を選ぶための大きな要因となっている推測できます。

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参考文献についてはコチラ