都市部の外構色彩の現状 -⑥都心における色彩調査-

武蔵小杉

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目的

LIXILの建材色彩調査で、存在するタイル等の色では派手な色や眩しい色といった極端に偏った色彩はあまり見られませんでした。しかし、少なからず景観に影響がでかねないような色彩が実在する結果となりました。

ここでは上記の結果を踏まえ、東京都心周辺の建物を調査し派手な色彩が使われている結果となっていないかを確かめることを目的としています。

調査方法

調査エリアを以下の図に示します。このエリアは、色彩基準が整う以前の建物と以後の建物がより混在する場所として現実的な調査できると考えます。

調査結果

考察

LIXILでの調査では、「明度が高くても彩度が低いもの」、「彩度が高くても明度が低いもの」がほとんどであるが、実状では彩度、明度ともに比較的大きいと思われるものが多くありました。これらの色彩は景観的に非常に目立ちやすい建物となってしまいます。また、明度、彩度が低い色彩が使われていたとしても、隣接する建物や周辺の色合いと比較的に明度、彩度が高いものは景観的に目立ってしまう結果となりました。

壁面色彩では、垢抜けた派手な色彩が使われている建物の中で、近い時期に塗り替えられたものがいくつもありました。区に壁面の色彩基準があったとしても、ギリギリ満たしていたり、その建物が色彩基準の届出対象規模を満たさず自由な色彩を使えたりする状況の場合、景観的に派手な建物になってしまうのではないかと考えられます。

下の写真の文京区にある建物を例に挙げさせていただきます。文京区が策定した「文京区景観計画」に記載された色彩基準には届出対象規模に「敷地面積3000㎡以上又は高さ60m以上又は延床面積30000㎡」と定められておりますがが、壁面色彩は基準が適用されず壁面基調色(壁面の4/5以上)、壁面強調色(壁面の1/5以下)が規制されていないので、10GY4/4の色彩で全壁面が塗られています。よく言えば個性的な建物ですが、街並みを総合的にみると印象を悪くしてしまう可能性を生む建物となっていしまっていると考えられます。

壁面色彩の目立ちは、より多く存在する結果となりましたが、それに比べて平面色彩の目立ちは12件中3件と少ない結果となりました。ただ、歩道で派手な色彩が使われることが多く、件数的に少なくても面積的に広く影響は大きく現れてしまいます。今回の調査では歩道以外に②の私立学校の門付近や④の空地部分に派手な色彩が使われていました。特に④では人通りが少ないがために長い間派手な色彩のまま放置されているのではないかと推測できます。

LIXILの調査で派手な色彩の外装材は存在する一方、景観関係者による誘導で派手な外装材や景観は作り出せなくなっていると考えていましたが、実際には景観的に問題がある建物が存在する結果となっています。調査結果の中でも過去1年以内に塗り替えられた派手な色彩を使用した建物も存在することから、都市部の色彩基準を梁を通すようにかいくぐることで景観関係者による誘導ができなくなってきているのではないかと感じています。

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参考文献についてはコチラ