調査の目的
東京都の都市部では、東京都景観計画および各区の色彩基準に基づき壁面の色彩が規制されてきました。東京では床材の色彩が規制されず、良好な景観、景色を作ることはできるのか、といったことがこのまとめの一つの目的ですが、景観を作る要素として色彩の規制以外に建材のバリエーションの数にもあります。
その景観を作る一つの要因として考えられる建材について、派手な景観をつくり得る建材はどのくらいあるのかということを調べるために調査を行います。
調査方法
今回の調査では、建材メーカー最王手であるLIXILの建材を調査対象としました。LIXILの「2014 タイル・建材総合カタログ」に存在する外装床タイル386点、外装壁823点について色彩の調査を行いました。下のようにカタログのタイルの色彩を色見本を使用し数値化しました。
出典:LIXILタイル・建材総合カタログ
(調査例)
調査結果
LIXILでは、色彩調和に関する記載や、論理的な方法で色彩のデザインという取り組みはありませんでした。しかし、主に色合いに関してLIXIL側が提案するイメージについての取り組みがされていました。色合いに関するイメージの提案を以下に示します。
※1 インテリアで使う場合は、アクセントカラーとしてポイント的に使うのがコツです。
※2 特に暗めの背景だと非常にはっきりと目立ちますが、白やライトグレーと組み合わせてしまうと見つけにくく読みにくくなってしまいます。特に目の水晶体の黄変が進んでいる高齢者の場合、この配色だと見にくくなるので注意が必要です。
※3 実は自然界にはほとんどみられない色であるため、インテリア空間に用いると現代的、都会的な印象が生まれます。
※4 インテリアではシンプルな広がり、洗練された印象を作り出しますが、個性的で目立つ色でありますので他の色との関係を整理して使うようにしましょう。
※5 すべての色を平均したニュートラルなカラーなので、組合せで使われたり、他の色を生かす色として使われたりすることが多いです。
※6 シルバーという色はインテリアの中で強い主張が無く、思ったより溶け込みやすいという特徴があります。
出典:カラーセレクトマニュアル(日本色彩研究所監修)
[色相の比較]
下の図は色相別でみた外装壁と外装床の数と全体の割合です。
床材、壁面材ともにR系やYR系が主に使用されています。YR系の素材が外装壁では全体の約71%、外装床では全体の約62%となった。N系、R系、YR系以外の材料でみてみると外装材では約8%、外装床では全体の約16%という結果となりました。
(色相別でみたタイル数と割合とその比較)
[明度の比較]
下図は、明度別でみた外装壁と内装床の数と全体の割合です。
明度3以上のものは、外装壁では全体の約98%、外装床では全体の約98%であり、低明度の材料は存在しない結果となりました。
(明度別でみたタイル数と割合とその比較)
[彩度の比較]
下図は、明度別でみた外装壁と内装床の数と全体の割合です。
外装床、外装床ともに目立った違いは見られませんでした。高彩度である彩度4以上のタイルでみると、外装壁では全体の約19%、外装床では全体の24%と比較的に内装材の方が多い結果となりました。
(彩度別にみたタイル数と割合とその比較)
[LIXILの派手な外装壁・外装床]
東京都景観計画の外壁の色彩基準において、一般的に彩度4以上のものは推奨されていません。また、高彩度かつ高明度のものは非常に派手に見えやすいです。そこで、LIXILの外装材の中で明度6以上且つ彩度4以上のものを算出したところ、外装壁では823中27種、外装床では389中15種存在しました。その一部を抜粋したものを以下に示します。
(外装材)
(外装床)
出典:調色屋(株式会社タカラ塗料)ホームページ
考察
色合いでみると、N系、R系、YR系のタイルが外装壁では全体の約91%、外装床では全体の約84%を占めていました。都市部で主にN系、R系、YR系の色合いが用いられる実態としては、LIXILのように選ぶことのできる色合いがないという現状があると推測できます。現地調査で比較的使用されていたY系の色合いについては、外装壁では4/823種、外装床では10/389種と僅かです。
LIXILの外装材の中で明度6以上且つ彩度4以上のものは外装壁では823中27種、外装床では389中15種というように派手な景観を作り出してしまうような色彩の外装材はごく僅かでした。しかし、このような派手な色彩を使った建物をつくることは、都市部の基準を満たしていたとしても景観アドバイザー等の景観関係者によってカットされてしまうことが多いようです。LIXILのような派手な色彩の外装材があっても派手な景観は作り出せないのではないかと考えられます。